2014年7月30日水曜日

懲戒解雇と失業給付について その2

まず、懲戒解雇という表現は、通常、会社の就業規則の制裁のところに出てくる。つまり、制裁の一番重いものとして、懲戒解雇があるのである。もちろん、就業規則に記載されていたとしても、そのまま懲戒解雇になるとは限らない。最終的には、司法の場で決着する。


なお、参考までに、労働契約法第15条の懲戒の条文を掲載しておく。
「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」


また、懲戒解雇という表現は、労働基準法には出てこず、労働基準法では、第20条の解雇の予告の中に「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合」という表現で、いわゆる監督署の除外認定を受ければ、解雇予告手当を払わなくてよいとするための規定として出てくる。


さらに、失業給付において懲戒解雇の場合は、自主退職と同じように3か月の給付制限がかかる。このことは、正しいのであるが、雇用保険法の中にもこの懲戒解雇という表現はでてこない。正確には、「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」の中の一つである。


詳しくは、後日行政手引きによるハローワークの認定基準を見るが、就業規則にある懲戒解雇を「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」として認定してもらうためには、監督署の除外認定が必要なのである。


従って、社労士としての私にとって、「懲戒解雇」、「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇」、「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」の3つの異同について整理しておくことは、重要だと考えるものである。






2014年7月26日土曜日

懲戒解雇と失業給付について その1

中小企業を主な顧客としている私にとって、助成金やいわゆる失業保険の給付からみて、解雇や退職勧奨あるいは雇い止め等の問題を避けて通ることはできない。


助成金をもらっている会社は解雇・退職勧奨・雇い止めについては慎重であるし、ほとんど出来ないといってもよい。


何故なら、解雇、退職勧奨に関しては一人でもあったら助成金は受けられないし、場合によっては受け取っていた助成金を返還しないといけない場合もある。


雇い止めや労働者からの退職の申し出による退職でも、その理由と一定の率や数があれば解雇、退職金と同様に助成金が受けられないことがあるのである。


一方、懲戒解雇であれば助成金を受けられないという事態は避けられるので、会社は何とか懲戒解雇にしたいと思い、相談を受けることがある。


他方、逆に労働者側は、解雇・退職勧奨であれば待期期間がなく、すぐに失業保険をもらえることをよく知っているので、解雇にならないかと考える人もいる。


このように弁護士の方の解雇、退職勧奨、雇い止めに関するアプローチの方法というか相談の接点とかがかなりが違っているのである。


従って、懲戒解雇を含めた解雇、退職勧奨等と助成金、失業保険の給付についての正確な理解が社労士の職域を守ることでもあると確信している。


そこで、まず、懲戒解雇と失業給付の問題について検討して行くことにしたい。







2014年7月17日木曜日

年次有給休暇 その5

事例2の場合、つまり夜勤専門の日給者の人(1勤務 14,000円(深夜割増分を含む)、通勤手当 1勤務 400円)の場合は、どうであろうか。


私なりの結論としては、通勤手当は支払う必要はないが、日給の14,000円は深夜割増分を控除することなく払う必要があると考えている。通勤手当については、事例1と同様の考えでよいし、日給14,000円については、この14,000円を通常賃金と考えて、支給するからである。


もし、日給と深夜割増分とを明確に分けてある場合の年次有給休暇については、少し話がややこしくなり、検討の余地が生まれてくるので、夜勤専門の人については、深夜割増分を含んで1勤務 14,000円という規定を作って、今のところ事業所を指導している。



ところで最近、事業所での研修会等において、会社の説明不足という点も重なって、誤解みたいなところも結構多いのだが、この年次有給休暇に関する質問や問い合わせが多くなってきていることを実感している。


今後、就業規則、賃金規程、労働契約書等でどのような表現が一番よいか、トラブル防止に役立つかを検討する必要があるとも考えているのだが、果たして。。。









2014年7月14日月曜日

年次有給休暇 その4

事例1及び事例2の労働者が夜勤勤務時に年次有給休暇を請求したときの現実の賃金支払はどうなるかを考えてみる。なお、就業規則上での規定は、通常賃金とする。


1)事例1(月給者):基本給 150,000円(月額)、資格手当20,000円(月額)、通勤手当4,100円(月額)、夜勤手当(深夜割増分)1回3,000円
2)事例2(夜勤専門日給者):1勤務 14,000円(深夜割増分を含む)、通勤手当 1勤務 400円



事例1については、通常賃金から控除しないということで、賃金実務が行われるわけだが、基本給や資格手当は、当然通常賃金と考えられるが、通勤手当や深夜割増分としての夜勤手当については、どうだろうか。


結論としては、通勤手当の1日分と夜勤手当については払う義務はない。この2つとも通常賃金ではないからである。まず、夜勤手当については、深夜割増賃金としての性格を持つので払う必要はない。


また、通勤手当については、判例もそれを後押ししている。理由としては、通勤手当が「実費補償的性格な手当」という性格をもっているからのようである。しかし実務上は1日分をわざわざ控除する会社はお目にかかったことがない。


ところが、長期の年次有給休暇を取得する際や年次有給休暇を全部消化した後に退職する場合が生じたときに、時々相談を受けることがある。これも原則から言えば、支払う必要はないのだが労働者の人が、なかなな納得しないことがあるようである。


従って、このへんのところを意識した就業規則、賃金規程、労働契約を作成する必要が出てくる。もちろん、控除しないという規定も含めてである。でも、専門家と呼ばれる人たちは、この点を理解した上での規定でなければならないと自戒を込めている昨今である。











2014年7月7日月曜日

年次有給休暇 その3

次に、賃金について考える。つまり、いくら払えば良いのかという問題である。まず、労働基準法上の規定を見てみる。


労働基準法第39条第7項に、
「使用者は、第一項から第三項までの規定による有給休暇の期間又は第四項の規定による有給休暇の時間については、就業規則その他これに準ずるもので定めるところにより、それぞれ、平均賃金若しくは所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金又はこれらの額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した額の賃金を支払わなければならない。ただし、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との書面による協定により、その期間又はその時間について、それぞれ、健康保険法 (大正十一年法律第七十号)第九十九条第一項 に定める標準報酬日額に相当する金額又は当該金額を基準として厚生労働省令で定めるところにより算定した金額を支払う旨を定めたときは、これによらなければならない。」


これによれば、1)平均賃金、2)所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」(以下、通常賃金と略する)、3)健康保険法による標準報酬日額に相当する金額の三つの中から支払えばよい。ただし、1)、2)の場合は就業規則等に規定が必要であり、また3)の標準報酬日額に相当する金額を選択する場合は、労使協定が必要である。なお、私が見る限り、就業規則等の規定でほとんどが2)の通常賃金である。


その2)の通常賃金に関する行政解釈は次のようになっている。
「一、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金には、臨時に支払われた賃金、割増賃金の如く、所定時間外の労働に対して支払われる賃金等は、算入されないものであること。

二、法第三十九条第四項の規定は、計算事務手続の簡素化を図る趣旨であるから、日給者、月給者等につき、所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う場合には、通常の出勤をした者として取扱えば足り、規則第二十五条に定める計算をその都度行う必要はないこと。」(其発第六七五号)


なお、以下に規則第二十五条がどうなっているかを以下掲載する。

第二十五条   法第三十九条第七項 の規定による所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金は、次の各号に定める方法によつて算定した金額とする。
 時間によつて定められた賃金については、その金額にその日の所定労働時間数を乗じた金額
 日によつて定められた賃金については、その金額
 週によつて定められた賃金については、その金額をその週の所定労働日数で除した金額
四  月によつて定められた賃金については、その金額をその月の所定労働日数で除した金額
 月、週以外の一定の期間によつて定められた賃金については、前各号に準じて算定した金額
 出来高払制その他の請負制によつて定められた賃金については、その賃金算定期間(当該期間に出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金がない場合においては、当該期間前において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金が支払われた最後の賃金算定期間。以下同じ。)において出来高払制その他の請負制によつて計算された賃金の総額を当該賃金算定期間における総労働時間数で除した金額に、当該賃金算定期間における一日平均所定労働時間数を乗じた金額
七  労働者の受ける賃金が前各号の二以上の賃金よりなる場合には、その部分について各号によつてそれぞれ算定した金額の合計額
 
 
 
以上のように、この通常賃金の考えを前提にして、現実の実務を行わなければならないと考えているところである。

2014年7月3日木曜日

年次有給休暇 その2

この労働日の考え方を年次有給休暇に適用すればどのようになるか事例を交えて検討することにする。


例えば、14時間勤務(午後18時から翌日午前9時まで)で、月10日から11日の夜勤専門で、勤続年数が1年の人を想定してみる。


この人が、年次有給休暇の請求をしたとすれば、どうなるかについての行政解釈は、以下のとおりであるので、二労働日を与えることになる。なお、いくらの賃金を払えばよいかについては、別途検討する。


「一勤務一六時間隔日勤務や一勤務二四時間の一昼夜交代勤務で一勤務が二暦日にわたる場合も同様に暦日原則が適用され、八割出勤の要件たる全労働日についても当該一勤務が属する二暦日が二労働日と計算され、年次有給休暇付与についても、当該一勤務の免除が二労働日の年次有給休暇の付与とされる。」(其発第九〇号)


つまり、この夜勤専門の人は、5回分の年次有給休暇を与えたら10労働日になるので、これで年次有給休暇は使い切ってしまうことになる。


ちなみに、パートタイマーのような比例配分も考えられるが、この人の場合一週間三〇時間以上なので一〇労働日となる。


ところが、これを労働時間の際の例外と混同してこの夜勤勤務を一労働日と考えて一〇回分の年次有給休暇を与えたとしたらどうなるのだろうか。


労働基準法上は、当然違反にならない。何故なら、本来は一〇労働日でよかったものを二〇労働日与えており、労働基準法を上回っているからである。しかも大幅に。。。