2015年5月10日日曜日

懲戒解雇と失業給付について その3

1、まず、労働基準法20条にある「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇」について検討する。

1)通常この規定は、監督署の除外認定を受ければ、解雇予告手当を払わなくてよいとするための規定として、存在する。労働法コンメンタールによれば、この認定は、解雇予告制度により労働者を保護するに値しないほど(つまり、予告手当を払う必要のないほど)の重大又は悪質な義務違反ないし背信行為が労働者に存する場合でる。ただし、企業内における懲戒解雇事由とは必ずしも一致するものではないとも述べている。


2)そして、労働法コンメンタール(平成22年度版)では「労働者の責に帰すべき事由」として認定すべき具体的事例として、次の6つが紹介されている。
(イ)原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における窃取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合。
(ロ)賭博、風紀紊乱(びんらん)等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合。
(ハ)雇入れの際の採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合及び雇入の際、使用者の行う調査に対し、不採用の原因となるような経歴を詐称した場合。
(ニ)他の事業場へ転職した場合。
 (ホ)原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合。
(ヘ)出勤不良又は出欠常ならず、数回に亘って注意をうけても改めない場合。

3)つまり、上記のような理由で解雇されたのであれば、除外認定をうけられ、解雇予告手当を支払わなくてもよくなるのである。もっとも認定にあたっては、上記の「個々の例示に拘泥することなく総合的かつ実質的に判断すること」になっているし、時々誤解もあるようなのだが、この除外認定は、就業規則上に懲戒解雇の規定がないと受けられないということでもない。



2、つぎに、雇用保険の規定である「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」について検討する。

1)「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」として給付制限を行う場合の認定基準(雇用保険行政手引より)よれば、
(イ)刑法各本条の規定に違反し、又は職務に関連する法令に違反して処罰を受けたことによって解雇された場合。
(ロ)故意又は重過失により事業所の設備又は器具を破壊したことによって解雇された場合。
(ハ)故意又は重過失によって事業所の信用を失墜せしめ、又は損害を与えたことによって解雇された場合。
(ニ)労働協約又は労働基準法に基づく就業規則に違反したことによって解雇された場合。
(ホ)事業所の機密を漏らしたことによって解雇された場合。
(ヘ)事業所の名をかたり、利益を得又は得ようとしたことによって解雇された場合。
(ト)他人の名を詐称し、又は虚偽の陳述をして就職したために解雇された場合。

2)上記(ニ)労働協約又は労働基準法に基づく就業規則に違反したことによって解雇された場合については、監督署での除外認定の具体的事例である「労働者の責に帰すべき事由」の6つのうち
次の4つについては、監督署の除外認定を受けることを要件としている(雇用保険行政手引上の表現と労働法コンメンタールでの表現が全く同じではないが、同じであると差支えない)。
(イ)原則として極めて軽微なものを除き、事業場内における窃取、横領、傷害等刑法犯に該当する行為のあった場合。
(ロ)賭博、風紀紊乱(びんらん)等により職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす行為があった場合。
(ホ)長期間正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合。
(ヘ)出勤不良又は出欠常ならず、数回の注意をうけたが改めない場合。

3)雇用保険上の「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」と労働基準法上の「労働者の責めに帰すべき事由に基づいて解雇」との違いについての大きな差はないが、細かく検討すれば違いはあるので、離職票を作る際には、留意する必要がある。



3、まとめ
1)司法の場で最終決着する懲戒解雇もそうだが、監督署での除外認定、ハローワークでの「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」のハードルはかなり高い。

2)従って、助成金を受給している会社にとって、ちょっとしたことでも「懲戒解雇」にしたいとする「衝動」はわからないでもないが、余程の「事由」でないと無理だと考えるのが妥当である。

3)もっとも個人的には、良好な雇用関係を作っておけばこのようなことを考える必要もないのだが、もし似たような事例にぶち当たった時に、参考にしてしていただくことを期待して。。。